生活習慣病とED
心と体のサインでED(勃起障害の兆候)を知る
男の心と身体は中高年以降、男性ホルモンの減少が引き起こす様々な症状と加齢、そしてストレスによって、まさに坂道を転げ落ちるような状態になっていく。
その「兆候」となる身体の状態が実はもう一つ起こってくる。それが「ED」すなわちペニスの勃起障害です。
これこそ加齢のせいや心因性のものが原因だと思っている方も多いかもしれない。ですが、EDは、実は恐ろしい「病気のサイン」なのです。
男性器の勃起はどのように起こるのだろうか。そのメカニズムは、まず性的興奮から始まる。
その結果、中枢神経からの刺激が抹消神経を介して、陰茎海綿体の中に伝わり、内皮細胞から一酸化窒素(NO)が放出される。
このNOが海綿体の筋肉をゆるめる働きをして、血管が拡張し、静脈血が流入する。
さらに血管の内皮細胞からもNOが大量に出て、海綿体が膨張を始める。これが勃起と呼ばれる現象だ。
それがある時間、継続されるのは海綿体白膜で貫通静脈が狭められるためだ。静脈閉鎖機構が働くことで硬さが維持されるのです。
ずいぶん複雑なメカニズムを通して、男性が元気になるわけです。
EDはこのうち、血管内皮から出るNOが少なるなるために起こると考えられている。海綿体平滑筋の弛緩が十分行われなくなり、勃起しなくなるのだ。
生活習慣病とEDの関係
ひとつの原因と考えられているのが、生活習慣病の進行による血管内皮の損傷である。
陰茎の動脈である血管は、内径が1~2ミリしかなく、動脈の中で最も細い。
ついで、心臓の動脈である冠動脈(3~4ミリ)、頭に行く頸動脈(5~7ミリ)、大動脈(6~8ミリ)と次第に太くなっていくのだが、陰茎の血管が最も細いために動脈硬化などの障害を最小に受けることになる。
二番目の原因となるのが酸化ストレスだ。この酸化ストレスは、血管内皮や神経に障害をお呼びし、血管内皮でアルギニンというアミノ酸からNO合成酵素が作られるのを妨げてしまう。
NOには、陰茎の勃起の他、血管を拡張して血液を増加させたり、血圧の降下、動脈硬化の防止、気管の拡張、腎臓の利尿作用等々身体の調節維持に必要な様々な役割がある。
この貴重なNOが、酸化ストレスによって出なくなると、やがて数々の生活習慣病(高血圧、糖尿病、高脂血症、うつ病、排尿障害等)を引き起こすことになるのである。
まさにEDは、様々な病を引き起こす前兆といえる。決して、奥さんに飽きたんどという心因性の原因ばかりで起こるものではないのだ。
ではNOの放出を減少させる酸化ストレスは、なぜ起こるのだろうか。
一般に人間が食事をしてカロリーを摂取すると、エネルギーがミトコンドリアから産生される。この時、酸素にフリーラジカルという不対電子がつく活性酸素も同時に作られることがわかっている。
活性酸素はペアになっていないひとりぼっちの電子を持つので、ペアになろうとして周囲のペアを壊して電子を奪う、これが酸化である。この様に不安定になりやすい状態のことおフリーラジカルと呼ぶ。
この活性酸素がDNAやたんぱく質、脂質、糖質などと反応して酸化するのが、酸化ストレスである。
酸化ストレスが硬くなると細胞や臓器が障害を受けやすくなり、細胞の老化やガンの原因にもつながっていく。
EDは酸化ストレスが増大の「最初のシグナル」
人間の身体には活性酸素を消去する抗酸化酵素がもともと備わっているが、加齢によりこの抗酸化物質が減少し、活性酸素を分解できなくなる。
この結果、酸化ストレスが増大していくのだが、その酸化ストレスにより障害を最も受けやすいのが、血管内皮細胞だといわれている。
EDは、その血管内皮細胞が酸化ストレスによって傷つき、MOを放出できなくなったために起こる。すなわち、EDは身体中に酸化ストレスが増大していることを示す「最初のシグナル」でもあるのだ。
となると、EDが起こったら「そろそろ、自分も年か」と考えるのではなく、「抗酸化物質が減少し、活性酸素を分解できなくなり、身体中の血管が傷つき始めていて危ない」と考えるべきなのである。
EDの段階でこのサインに気づけば、その先の血管の老化が原因で起こる生活習慣病を未然に防ぐことができるのだ。
つまり、EDになったということは、ある意味、自分の身体の状態が予見できるという点で、喜ばしいことでもある。このことを、まず覚えておいてもらいたい。